じゅうにしの どうぶつ・おおかみの おんがえし
十二支の動物(じゅうにしのどうぶつ)
むかし、ある年のくれ(暮れ)に、いちばんえら(偉)い山の神さまが、お山の動物たちにわかるようにと「お達し」の立て札を出した。それには、こう記してあった。
「来年のがんじつ(元日)の朝早く、新年のあいさつにわたしのところへきなさい。いちばん早くきたものから、十二番目までのものを順に一年間ずつ、大将にしてやろう」
お山の動物たちは、これを見て、みんな来年のがんたん(元旦)がくるのを心待ちにしていた。ところが、そんなお達しをあまり気にしない動物もいた。ネコはその日をわすれてしまったので、おおみそか(大晦日)にネズミのところへ聞きにいった。するとネズミはわざと一日おくれたあさって(明後日)の朝と教えた。
さて元日の朝になるとウシは歩くのがおそいからということで、暗いうちから出かけた。これを見たネズミはウシの背にピョンと乗った。ウシはそんなことには気がつかず、山の神さまへと汗びっしょりになってむちゅう(夢中)で歩いた。そして、ようやく着くことができ、だれよりも一番のりと、おお喜びでいた。
やがて、ギギィッと大きなとびら(扉)が開き、山の神さまが奥の方にちんざ(鎮座)して、みんなのくるのを待っていた。ウシが前に進んで、あいさつをしようとおじぎをするやいなや、ネズミがウシの背からピョコンと前にと(跳)びおりて、いちばんはじめにあいさつをしてしまった。
ウシはびっくりしたが、もう遅い。、二番目になってしまい、それから後に続いて、トラ、ウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、トリ、イヌ、イノシシがつぎつぎにあいさつをした。
山の神さまはいちどう(一同)を前にして約束どおり一番早くきたねずみをことし(今年)の大将にした。それから早く来た順に、毎年、十二年に一回ずつこうたい(交代)で大将にすることを決めた。そして以後、山の自然は十二の動物によって支えられていくことになった。
これを聞いたネコは、翌朝おお急ぎで山の神さまのところへ行ったが、なかま(仲間)には入れてもらえなかった。それからというもの、ネコはネズミをにくんで今でも仲が悪いという。
また、ほかの動物はこのことを知らなかったので、大将の仲間入りはできなかった。しかし、神や仏の使者としてしぜんかい(自然界)をしゅご(守護)するようになったという。
おわり
狼の恩返し(おおかみのおんがえし)
かつぼうやま(勝峰山)のふもとに、ごへい(五兵衛)とコウさんの老夫婦が住んでいた。
ある秋の明け方、コウさんがふと目をさますとえんがわ(縁側)でうめき声が聞こえた。まだ起き出すには早いのであるが、コウさんは気になって外へ出てみた。すると、一匹のオオカミが口を大きくあけ、よだれをたらしながらうめいていた。
きじょう(気丈)なコウさんは近寄って口の中をのぞいてみると、ヤマドリの骨がのど(喉)に刺さっている。
コウさんはオオカミをさとすように、「これ、オオカミ、わしの手をかまなければ喉の骨を取ってやるが」というと、オオカミは頭をたれてうなずいた。
コウさんはてぬぐい(手拭)を手に巻き、オオカミの口の中へ手を入れて喉の骨を取り出してやった。そして、ドンブリに水を一杯くんできて、「これ、オオカミよ、気分がよくなった水を飲んでおかえり」と言いのこし、家の中に入って朝食のしたく(支度)にとりかかった。
しばらくして、コウさんが外へ出てみると、ドンブリの水は飲みほされており、オオカミの姿は見えなかった。
それから数日が過ぎた明け方、縁先になにかを置くような音がした。夜が明けて、コウさんが外へ出てみると、大きなヤマドリがいちわ(一羽)置いてあった。
これはきっと先日のオオカミが喉に刺さった骨を取ってもらったお礼に持ってきたのだろうとコウさんは思った。そして、四つ足のオオカミでさえ人の恩を報いる道を知っていると近所の評判になった。
おわり
(注)コウさんのぼだいじ(菩提寺)は大久野細尾の光明寺にある。この寺院には、喉になにかつかえたときにきがん(祈願)し、つかえがとれると、そのお礼にと、いつとはなしに茶わんが数多く納められるようになった。
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